はじめに 〜from よこもん

子供を育てるのって、本当にタイヘンです。
妊娠中は、産まれくる子供を夢見て、優しいお母さんになろう、素敵な子育てをしよう、なんてロマンチックな気分に浸り、辛く苦しい出産の後には、人生最大の喜びと達成感を味わい、オンナに生まれてきてよかった! と満面の笑みを浮かべるでしょう。
でも、実際に赤ちゃんが育ち、動き始めると、母親のだっこひもに納まる「所有物」から、ひとりの「人間」になっていくのです。それも、他の哺乳類のようにすぐ自立してくれればいいけれど、そうはいかないのが人間です。親がいないと何もできず、そのくせ自分でやろうとしたりして、もうこっちは、はらはら、ドキドキ、イライラの連続。最後には堪忍袋の緒が切れて、ムッカー!となってしまうことも多々あります。
子育ては、そのすべての行程が、体力と気力の勝負だったのです。
このホームページを始めた頃の私は、そんな毎日にいらだちを感じていました。なぜなら、独身&夫婦時代を、仕事と恋愛と夜遊びで必要以上に長く謳歌し、すっかり「自由な生活」を地でいってきた私にとって、育児生活とのギャップはあまりに大きすぎたのです。出産当初こそたくさんの友人が遊びにきてくれましたが、徐々に子供のいない友人や異性とは縁遠くなり、新しくできたママ友達とは子育て以外の話ができず、かといって夜、パーッと飲みに出ることもできず……。
おまけに、ただでさえ40代を間近にチチは垂れ、ぎっくり腰や筋違いをしょちゅう起こし、「疲れた〜」が口癖になっている私にとって、子供の元気いっぱいの「ウルトラマンキーック!」などは、もう、ムチ以外のなにものでもありません。その上に、牛乳こぼしたり、オシッコもらしたり、カベに落書きしたり、ビデオデッキにバナナをつっこんだりと、「常識」や「秩序」がどこにも見あたらない子供の行動。これには、それまで仕事で修得してきた、スケジュール管理や整理能力、段取り、要領などすべてのノウハウが、いっさい通用しません。そんなことを強要しようものなら、子供たちはただただ泣きわめくだけ。野生の子を前に、私の独身時代の価値観は、ガラガラと音を立てて崩れていったのでした。
それでも、子供は育つのです。親の思うとおりには育たなくても、ちゃんと自分の人生を歩みます。そして、母親もまた、これを自分の人生として、楽しく向き合わなければなりません。
このホームページは、そんな成長途上にある私と、徐々に自立していく子供たちの様子を、ありのままに描いたものです。記録した期間は、我が家の下の子が生後半年から、上の子が5歳になるまでのおよそ3年間。
子供との日々を記録してみてなによりも驚いたのは、どんなにガマンならなかった出来事も、書いて、ネットにのせることで、「楽しみ」に姿を変えたことでした。悲惨なイタズラ現場も、写真を撮って記事にすれば、「いいネタをゲット!」とばかりに心が踊るのです。みなさんからのメールももちろん、疲れた心に潤いを与えてくれました。そして嬉しかったのは、職場にいる夫を始め、家族や親戚がこのホームページを見て、私の「がんばってる」姿を手にとるように理解してくれたこと。どんなに、育児をラクにしてくれたことか!
●「よこもん」こと 松田ようこ のプロフィール●
兵庫県姫路市生まれ。10代の4年間をNYで過ごす。
ライター、編集者、翻訳家。
音楽雑誌を始めとする情報誌や単行本制作に携わり、
アーティスト、タレント、文化人らのインタビューから、
ベンチャーズが日本で行ってきた2000回ちかい全公演の日程と会場の徹底調査や、
騒音が人を難聴にする(?)、防虫剤は体に毒(?)などの
社会的テーマまで、多岐にわたる取材を手がける。
代表作には、小学館『ちんちんとおっぱいとだっこ』(著)
二見書房『出産育児どーするどーなる百科(まついなつき著)』(編集協力)
小学館『内緒で年100万円が貯まるやりくり術(荻原博子著)』(編集協力)
東亜音楽社『ビルボード・ヒットメーカーズ ポップス、シンガー・ソングライター@A』(翻訳)、
同『ビルボード・ヒットメーカーズ ソウル、リズム&ブルース@A』(翻訳)などがある。
森(しん)
長男。1月25日、夜の11時00分に東京都世田谷区の個人産院で生まれる。母さんのお腹の中に宿った直後、よく“出る”と言われる渋谷区の某トンネルを車で走ったとき、強烈な悪寒が母体全身を駆けめぐり、もしや胎内に生命体がいるのでは……と直感。案の定、妊娠と診断され、おまけに切迫流産という危険も背中合わせだった。それでも、生まれた子供は元気に育つ。1歳半にして兄となり、「ひとりっこ」にあこがれ続けている。やっぱり「シックス・センス」がかっていて、1歳の頃は部屋の片隅に「おじちゃんがいる」と指をさし、6歳のとき夜中に「悪い人たち」が現れて突然39.1度の高熱を出したことも……。
陽(ひなた)
長女。1年半後の8月3日、夜の11時17分に兄と同じ産院で、同じ院長先生にとりあげられる。2人目ということもあって、放ったらかし状態でほとんど眠っていた0歳時代を過ごした。2歳くらいまでは髪の毛が栗色のカーリーヘアで、道行く人々が「かわいい赤ちゃん!」と誉め称えてくれたものだが、それも3歳になると普通の髪におちつき、以降たいした誉め言葉は聞いていない。常に兄を手本にし、兄にいじめられ、兄にもてあそばれ、兄に支配されてきたせいか、外に出ると他人を仕切りまくる。
とうさん
グラフィックデザイナー。趣味は、空手とガーデニング。
かあさん
よこもんです。プチ更年期、ウクレレ弾きながら楽しんでいます。